虐待経験者の「本音」に耳を傾けて: 親が悪い、だけじゃない

1. 山本昌子さんの活動背景

東京都在住の社会活動家である山本昌子さんは、児童養護施設出身であり、親からの虐待経験があります。
この経験が、彼女の現在の活動の大きな動機となっているのです。
山本さんは、親のネグレクト(育児放棄)により生後4カ月で乳児院に保護され、2歳から18歳までを児童養護施設、その後19歳までを自立援助ホームで過ごしました。
施設を卒園した後は、家族同然に接していた職員らに会えなくなり、深い孤独感を味わいます。
そのような孤独感や過去の経験から、山本さんは虐待経験者や児童養護施設出身者が集まれる「居場所」をオンラインや東京都杉並区の自宅で提供しています。
また、経済的に困窮する若者に対しても支援物資を送るなどの活動を行っています。
彼女が特に訴えたいことは、「親が悪い、だけでは問題の解決にはならない」ということです。
2023年8月には虐待経験者5人へのインタビューをまとめた著書「親が悪い、だけじゃない 虐待経験者たちのREAL VOICE」を出版しました。
この本では、児童相談所との関わりがあったものの、親に脅されて保護が遅れたケースや、転校を拒んで施設入所を遅らせたケースなどが取り上げられています。
成人してからも実父から性的虐待を受け続ける女性や、母親の交際相手から性的虐待を受けた女性の体験も詳細に記述されています。
インタビューを通じて見えてくるのは、虐待を受けながらも親をかばいたいという複雑な気持ちです。
例えば、母親が経済的な問題から離れられない状況にあるため、母親を大切にしたいと思う女性もいました。
児童相談所の職員に母親を批判されると、かばう気持ちが芽生える若者も多いのです。
それでも、別の一時保護所の職員から「どちらの気持ちも持っていていい」と言われたことで救われたという声もあります。
山本さんは、虐待されている子どもだけでなく、虐待に加担する親もまた孤立していると指摘します。
「親が悪い」と断罪するだけでは、親も孤立し、問題は解決しないのです。
虐待の犠牲になっている子どもたちの未来を変えるためには、彼らの声に耳を傾け、本当に必要とされる支援を提供することが重要です。

2. 著書の紹介

今年8月に『親が悪い、だけじゃない 虐待経験者たちのREAL VOICE』というタイトルの著書が出版されました。
この本は、虐待を経験した5人の若者へのインタビューを元に構成されています。
インタビュー対象者は19歳から24歳までの若者で、それぞれ異なる背景や状況を持っています。
彼らは児童相談所の関わりがあったものの、親からの恐れや転校などの理由で施設の入所を拒み、保護が遅れたケースが多いです。
あるインタビューでは、実父から性的虐待を受け続けていた女性が含まれており、その女性は小学4年生の頃から虐待が始まりました。
母親もその事実を知っていたが、経済的な理由や他の問題から見て見ぬふりをしていたとされています。
この女性は、母親を大切にしたいと思う複雑な感情を抱きながらも、父親から離れられない状況にありました。
また、母親の交際相手から虐待を受けた別の女性も登場し、彼女も母親をかばう傾向がありました。
児童相談所の職員が母親を非難すると、その女性は母をかばいたい気持ちが強くなり、怒りや恨みの感情を封じ込めてしまいました。
そのため、別の職員から「どちらの気持ちも持っていていい」と理解を示されたことで救われたといいます。
この本を通じて、虐待の問題は単純に親を悪者にするだけでは解決しないことが明らかにされています。
子どもだけでなく、親自身も深い孤立感や問題を抱えており、彼らの支援が必要であると強調しています。
それぞれのインタビューが深く掘り下げられており、虐待の複雑な背景や感情が浮き彫りになっています。
虐待の経験者たちの「本音」に耳を傾けることが、問題解決の糸口となると考えられています。

3. インタビュー内容と学び

この記事では、虐待経験者の生の声を通じて虐待問題の複雑さを明らかにします。
虐待を受けた若者たちが語る本音には、単に「親が悪い」というだけで解決できない深い背景があります。
このインタビューを通じて、彼らがどのような経験をし、どのような感情を抱えているのかを掘り下げていきます。
山本昌子さんは、東京都で社会活動家として児童養護施設出身者を支援しています。
彼女も自身の経験をもとに虐待問題に取り組んでおり、「親が悪いだけでは問題は解決しない」と強調しています。
山本さんは幼少期に親のネグレクトにより児童養護施設で育ち、その経験から現在も虐待を受けた若者たちに「居場所」を提供しています。
山本さんがインタビューで取り上げた若者たちは、児童相談所の関与があったにもかかわらず、親からの脅しや転校の嫌悪感などで保護が遅れたケースがありました。

ある女性は小学4年生から実父の性的虐待を受け続け、母親がそれを知りながらも無視してきた中、母親を守りたいと感じていました。
このような感情は、山本さんによれば特別なものではなく、多くの虐待経験者が抱えるものです。
この事実は、親を断罪するだけでは解決しないことを示しています。
また、別の女性のインタビューからは、児童相談所の職員によって母親が批判されることで、逆に母親をかばいたい気持ちが芽生え、怒りや恨みを抑え込んでしまった例が紹介されています。
しかし、別の一時保護所で「どちらの気持ちも持っていていい」と言われたことで、その女性は救われたといいます。
この言葉が彼女にとって大きな癒しとなり、感情のバランスをとれるようになったのです。
山本さんは、「虐待が明らかになれば親を責めるのが簡単だが、それでは逆効果になることが多い」と指摘しています。
親も孤立し、さらに子育てに自信を失い、悪循環に陥ることがあります。
問題の解決は被害者のみならず、虐待に加担する親への支援も含めて考えるべきです。
山本さんのインタビューを通じて、虐待問題の深さと解決の難しさを再認識しました。
彼女の活動やインタビューによって浮かび上がる「本音」は、問題解決のための貴重な示唆を与えてくれます。
虐待を受けた当事者の声に耳を傾け、その声を社会全体で共有することで、未来に向けた有意義な支援策を考えるきっかけとなるでしょう。

4. 虐待の悪循環

虐待が発覚すると、一般的に親が厳しく非難されます。しかし、この非難によって親も孤立し、結果として問題がより深刻化することが少なくありません。孤立した親は、相談する場所を失い、助けを求めることが難しくなるため、虐待の悪循環に陥ることが考えられます。つまり、親への社会的非難は、彼らをますます孤立させ、最終的には問題の解決を妨げる要因にもなり得るのです。

この悪循環を断ち切るためには、まずは虐待が行われる家庭の実態を深く理解することが不可欠です。問題の根底にある原因や、親が相談しやすい環境を整えることで、初めて虐待の連鎖を断ち切ることができるでしょう。具体的には、家族に対する包括的な支援体制、例えばメンタルヘルスケアや経済的支援などが求められます。

虐待を行う親もまた、過去に何らかのトラウマや問題を抱えていることが少なくありません。彼らの背景を理解し、親自身もまた支援やカウンselingを受けられる環境を作ることが、問題の根本解決に繋がると考えます。親への非難を避け、支援の手を差し伸べることが、健全な家庭環境を作り出す第一歩です。

一方で、虐待を受けた子どもたちも、長期的な支援が必要です。彼らの心の傷は深く、単に保護されるだけでは不十分です。心理的ケアやリハビリテーションを通じて、新しい生活を築く手助けをすることが求められます。被害者の声をしっかりと受け止め、具体的で持続的な支援を提供することが、未来への希望を育む一歩となるでしょう。